本日のポイント:CT、降圧、鎮痛・鎮静。
内科当直をやっていると、非内科系疾患に遭遇する時が往々にしてあります。
吐き気や嘔吐、頭痛、心窩部痛などは内科救急が初診を担当し、実は他科にコンサルトする必要がある緊急性の高い疾患であった!ということも多いですので、ある程度はその初期対応を知っておく必要があります。
今回はその中で比較的頻度の高い、そして見逃すとやばい、「くも膜下出血」をテーマに話を進めていきたいと思います。
「くも膜下出血」というと、教科書には「突然、後頭部をバットで殴られたような激しい頭痛」を訴える、というような書かれ方をされていることが多いですね。加えて、その発症が「突然」とか「急に」とか「その時の状況を述べることができる(例えば、トイレで息んだ時)」等、突発型であることを強調するような書き方も目につきまおす。
これらはいずれも疾患を鑑別する上で、非常に重要な知識ではあるのですが、実際には軽度の頭痛から始まったり、徐々に発症したと訴えたりすることもしばしばあります。
以前、熱中症の疑いで受診した、くも膜下出血の一例* を紹介しましたので参考にしていただければと思います。 *「嘔吐」は危険なシグナル【症例2】。
内科当直で「くも膜下出血」を疑ったら、どのように対応すれば良いのでしょうか。初期対応の肝は、”再出血の予防“です。それでは、大まかな手順を見ていきましょう。
- 頭部CTを撮る。 少しでもくも膜下出血を疑い、完全には否定できないのならCTを撮ることを強くお勧めします。
- 1.で診断できたなら、脳外科コンサルト。オンコールでも、必ず電話する!
- メイン(点滴のバッグ)にアドナ1A、トランサミン1Aを混注(脳外科医によって好みが分かれます)。
- sBP 120~140mmHgを目標に降圧を開始(最新の脳卒中ガイドライン2021(案)ではsBP<160mmHg)。 例)ニカルジピン(10mg/10ml) 0.5~1γ≒2~3ml/h(体重50kgの場合)で開始(添付文章とは少し異なっていますが、施設ごとのやり方でいいと思います)。
- 侵襲的な処置を避け、適切な鎮痛、鎮静を行う。 例)ペンタゾシン1A=15mg+生食50ml 15分で静脈内投与。ジアゼパム1/2~1Aを緩徐に静脈注射。ミダゾラム1A(10mg/2ml)+生食8ml=ミダゾラム1mg/1ml 2mlずつ静脈注射。呼吸抑制に注意。
- 余裕があれば、3D-CTAを撮る(脳外医師に確認の上)。
上記6つは、あくまで診断と再出血の予防に絞った、当直医がやるべき最低限の初期対応ですので、誤解のないようにお願いします。
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