これだけは知っておきたい骨粗鬆症の基礎知識

雑記
本日の目標
  • 骨密度のグラフが読めるようになる。
  • 骨粗鬆症治療の基本がわかる。

突然ですが、皆さんはこのグラフに見覚えがありますでしょうか。

汚い図で申し訳ございません。

もう少し要素を追加していきましょう。

図1

答えは、骨密度のグラフでした。

本日は、

  • 骨密度のグラフが読めるようになること
  • 骨粗鬆症の治療がどんなものであるか、最低限の知識を身に付けること

の2点を目標に解説していきたいと思います。

骨密度のグラフ

縦軸と横軸

まずは基本的なところですが、図1にお示しする通り、縦軸が骨密度(g/cm2横軸が年齢を表します。

同年齢平均値

図2

図2をご覧ください。

左上から右下に斜めに横断する3本の線ですが、これは中央が年齢毎の骨密度平均値を結んだ線、そしてその上下に走るのが、±2SDを結んだ線です。

*SD=標準偏差

対象の患者さんの骨密度を、同年齢の平均値と比較することができます。

YAM

YAMは、骨粗鬆症を診断、治療する上で必ず知っておかなければならない用語です。

YAM(Young Adult Mean)

若年成人平均値のこと。

腰椎では20~44歳、大腿骨近位部では20~29歳の骨密度平均値を指す。

図3

図3をご覧ください。

真ん中に平行に走った2本の線はそれぞれYAMの70%、80%となるラインを表します。

%YAM」は便宜的に用いているだけなので用語として覚える必要はありませんが、YAMを100%とした時の、対象の患者さんの骨密度(%)を表しています。

これらの線によって区切られた領域の色分けは何を表しているのでしょうか?

それを理解するためには、骨粗鬆症の診断基準について触れておく必要があります。

骨粗鬆症の診断基準

骨粗鬆症の診断基準
  • 脆弱性骨折あり
    • 椎体骨折または大腿骨近位部骨折あり
    • その他の脆弱性骨折があり、%YAM<80%
  • 脆弱性骨折なし
    • %YAM<70%または同年齢平均値≦-2.5SD

上記のいずれかを満たす場合に、骨粗鬆症と診断する。

脆弱性骨折とは、軽微な外力によって発生した非外傷性骨折のこと。
軽微な外力とは、立った姿勢からの転倒か、それ以下の外力をさす。

すなわち、グラフの色分けには、以下のような意味合いがあります。

図4

正常ゾーン(%YAM≧80%)

椎体または大腿骨近位部に脆弱性骨折がある場合のみ、骨粗鬆症と診断される。

骨量減少ゾーン(70%<%YAM≦80%)

その他の脆弱性骨折があれば、骨粗鬆症と診断される。

骨粗鬆症ゾーン(%YAM<70%)

骨折の有無によらず、骨粗鬆症と診断される。

グラフのまとめ

  • 縦軸は骨密度(g/cm2横軸は年齢を表す。
  • 斜めに走る3本の線は、骨密度の同年齢平均値とその分布範囲を表す。
  • YAM=若年成人平均値
  • YAMの70%および80%を示す2本の直線により、正常・骨量減少・骨粗鬆症の3領域に区分されている。

このようなグラフに各個人の骨密度の値をプロットすることで、同年齢と比較してどうか、骨粗鬆症かどうかが一目瞭然というわけです。

骨粗鬆症の治療

以下に示すのが、骨粗鬆症に用いられる薬剤たちです。

  • カルシウム薬
  • 活性型ビタミンD3製剤
  • ビスフォスフォネート製剤
  • デノスマブ製剤
  • 選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM)
  • 副甲状腺ホルモン製剤
  • モノクローナル抗体製剤
  • その他…

ご覧のように非常に種類が多く、いったい何をどう使えばいいのかわかりませんよね。

しかし、ご安心ください。

骨粗鬆症の成因を理解すれば、治療方針も選択できるようになります。

骨粗鬆症の成因

骨粗鬆症は骨強度低下に基づいて脆弱性骨折が惹起される危険性が高い病態として定義されます。

骨強度は骨密度骨質により規定され、それぞれの与える影響の比率は7:3とも言われています。

骨密度、骨質を低下させる要因は、そもそも骨の材料となる成分が足りないか、骨吸収が亢進しているか、骨形成が低下しているかです。

すなわち、治療の大筋は、①骨の材料を増やす②骨吸収を抑える③骨形成を促すの3種類のいずれかしかありません。

薬剤選択の実際

骨粗鬆症と診断されたら、全例が薬物治療の対象となります。

まずは、活性化ビタミンD3製剤の投与開始を検討しましょう。

小腸からのカルシウム吸収を促すことで、骨の材料を増やします

良く用いられる処方例を以下にお示しします。

例)エルデカルシトール(エディロール)0.75μg、1日1回内服

高Ca血症に注意。定期的に採血!

続いて、症状の重症度やタイプに応じて以下の薬剤を検討します。

骨吸収骨形成代表的な薬剤
抑制作用ビスフォスフォネート製剤
デノスマブ製剤
SERM
促進作用副甲状腺ホルモン製剤
抑制作用促進作用モノクローナル抗体製剤
骨粗鬆症治療薬

剤形や投与方法も様々あるので、患者さんに応じて最適なものを選択しましょう。

ビスフォスフォネート製剤

作用機序

破骨細胞による骨吸収を抑制する。

顎骨壊死に注意。
非常に稀なので、本副作用を恐れて治療しないというのは本末転倒。
食道炎、食道潰瘍に注意。
朝起きた時に、コップ一杯(約180cc)の水でかまずに飲む。
服用後30分は横にならず、飲食並びに他の薬剤の経口摂取も避ける。
アレンドロン酸=フォサマック
  • 錠剤、1錠5mgまたは35mg
    • 5mg…1日1回、1回1錠内服
    • 35mg…週1回、1回1錠内服
アレンドロン酸=ボナロン
  • 錠剤、液剤、注射製剤がある。

錠剤5mgまたは35mg

  • 5mg…1日1回、1回1錠内服
  • 35mg…週1回、1回1錠内服

液剤35mg…週1回、1回1錠内服

点滴静注剤900μg/100ml…4週に1回、900μgを30分以上かけて投与

ミノドロン酸=ボノテオ、リカルボン
  • 錠剤、1錠1mgまたは50mg
    • 1mg…1日1回、1回1錠内服
    • 50mg…4週に1回、1回1錠内服
ゾレンドロン酸=リクラスト
  • 点滴静注剤、5mg/100ml
  • 1年に1回、5mgを15分以上かけて投与

デノスマブ製剤

作用機序

破骨細胞による骨吸収を抑制する。

低Ca血症に注意。定期的に採血!
デノスマブ=プラリア
  • 皮下注剤、60mg/1ml
  • 半年に1回、60mgを皮下投与

選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM)

作用機序

閉経でエストロゲン分泌の低下によって過剰となった骨吸収を調整する。

静脈血栓塞栓症に注意。
バゼドキシフェン=ビビアント
  • 錠剤、1錠20mg
  • 1日1回、1回1錠内服

副甲状腺ホルモン製剤

作用機序

骨芽細胞による骨形成を促進する。

悪性骨腫瘍、転移性骨腫瘍禁忌
投与期間は24カ月間まで。
椎体骨折既往者が良い適応
テリパラチド=テリボン
  • 皮下注剤、56.5μg
  • 週1回、56.5μgを皮下投与
テリパラチド=フォルテオ
  • 皮下注剤、1キット600μg
  • 1日1回、20μgを自己注射により皮下投与

モノクローナル抗体製剤

作用機序

骨芽細胞による骨形成を促進するとともに、骨吸収抑制作用も有する。

心血管イベント上昇
投与期間は12カ月間まで。
骨折の既往等、重症の骨粗鬆症に用いる。
ロモソズマブ=イべニティ
  • 皮下注剤、105mg/1.17ml
  • 月1回、210mgを皮下投与

治療効果判定

骨密度測定
  • DXA法で撮影し、腰椎大腿骨近位部の値を参考にします。
  • 4カ月以上の間隔を空けることで保険適応となりますが、治療効果の現れる半年程度ごとのフォローが一般的なようです。
骨代謝マーカー
  • 治療開始前に骨吸収亢進骨形成低下どちらの病態が優位か、治療開始後にどの程度骨吸収抑制骨形成促進が得られたか、血液検査で簡便に測定することができます。
骨吸収マーカー骨形成マーカー
TRACP-5b, 他P1NP, 他
  • 治療開始前および開始3~6カ月後に測定します。

参考文献

  • 原発性骨粗鬆症の診断基準(2012 年度改訂版), 日本骨代謝学会,日本骨粗鬆症学会合同原発性骨粗鬆症診断基準改訂検討委員会
  • 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版, 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会(日本骨粗鬆症学会, 日本骨代謝学会, 骨粗鬆症財団)

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