うま
ねこ
少し旬を過ぎたかもしれませんが、、、
小池百合子氏(過労のため6月22日~30日まで入院していた)に対する、麻生太郎氏や舛添要一氏の心無い発言が物議を醸しているようですが、発言に対する批判や政治のことは他の詳しい方々にお譲りするとして、医学的に小池氏の入院がどういうものだったかについて大真面目に考察をしていきたいと思います。
また、その中で見えてきた過労問題についても、ついでにまとめてみました。
ニュースの概要
今回話題となった記事の抜粋です。
『小池都知事、過労で入院 コロナ、五輪対応続き静養』
https://www.tokyo-np.co.jp/article/112135(東京新聞, 6/22)
小池都知事に「過労くらいで1週間も」 舛添要一氏が静養に苦言…「時代遅れ」と反発も
https://www.j-cast.com/2021/06/29414865.html?p=all(J-CASTニュース, 6/29)
小池百合子氏の今回の入院に至るまでの経過(現病歴)をざっくりまとめます。
現病歴
2021年6月1日 20年近く飼っていた愛犬「ソウちゃん」が亡くなる。
6月15日ごろより体調不良を訴えていた。「2日連続で徹夜」する日もあったそう。
6月22日15時すぎ 市区町村、医師会との会議で、声のかすれを訴えた。
息切れやふらつきといった症状がみられ、同日20時からの生報道番組への出演を取りやめると同時に、都内病院を受診。過度の疲労により静養が必要と判断され、(精査加療目的に)入院となった。
本来はここで問診や身体診察、様々な検査を通して鑑別疾患を挙げていくわけですが、今回はネット情報に限られること、すでに退院した後であることから、先に入院後経過を整理してから考察に進みたいと思います。
入院後経過
6月27日 入院期間の延長を発表。
6月28日 疲労が取れず、発熱が続いているとの情報。
6月30日 退院。
7月1日 リモートでの会議に出席、9日ぶりの公務復帰となった。
7月2日 公務復帰後初の記者会見を実施。
7月3日 都民ファ候補者の応援に電撃的サプライズ参戦。
小池氏の病状について
#6月1日 愛犬「ソウちゃん」の死
小池氏の自宅近辺でも、飼い猫が “ソウちゃん” と友達だったという近隣住民から、小池氏と “ソウちゃん” の最期の日々について話が聞けた。
「今年に入ったあたりから歩けなくなり、目も見えなくなってきていました。そのうち徘徊や夜鳴きが始まり、認知症みたいになっていましたね。亡くなったのは6月1日でしたか。その2日ほど前から目に見えて弱っていました」
「5月に入ってからは、夜は早めに帰って来られることも多かったと思います。 “ソウちゃん” と過ごせる最後の時間を惜しんでいたんでしょうね」
「あるときから、都知事がごく近い数人の職員にだけ、愛犬 “ソウちゃん” の死を打ち明けていました。20年近くも飼っていた老犬でしたが、都知事は家族がいないだけあって、我が子のような溺愛ぶりは有名でした。後にも先にも、あんな悲痛な様子の都知事は初めて見ましたよ」
Yahoo!JAPAN ニュース, 6/29
とあるように、周囲の人から見ても、愛犬の死は小池氏にとって相当な心理的負担であったようです。
#6月15日ごろより体調不良を訴えていた。「2日連続で徹夜」する日もあったそう。
都ファ代表の荒木千陽都議(中略)に小池氏の入院について直撃した。
「都民ファの応援より、本人の体が大丈夫なのか、と心配しています。私は3~4日前、小池さんに会ったんですが、『夜中に(内閣官房から)通知が来るので全然、寝れない。通知が来てから動くからそもそも寝られないのよ』と言ってました。職員もみんな寝てなくて、すごくお疲れの様子でした」
Yahoo!JAPAN ニュース, 6/24
コロナやらオリンピックやら都議選やらで、身体的にも「過労」の状態にあったことは容易に想像できます。
#6月22日 声のかすれ、息切れ、ふらつきなどの症状を訴え、精査加療目的に入院
情報が少なく、他の器質的疾患の可能性など考慮せねばならないことはありますが、
呼吸困難、ふらつき(めまい)などは過労に伴う自律神経症状として矛盾しませんし、ストレスが原因で発症する声のかすれも報告されています(機能性発声障害)。
#6月28日 発熱
いつから、何℃といった情報がありませんが、一部報道で発熱があったということでした。
こちらについても、ストレスが原因で交感神経が優位となり体温上昇を引き起こす、機能性高体温症という疾患概念があるようです。
鑑別診断
結論から申し上げますと、調べてみても適当な病名が思いつきませんでした!(ここまで読んでくださった方、申し訳ありません^^;)
ここまで書いておいてなんですが、この少ない情報から鑑別診断を挙げることはかなり困難なんじゃないかなと思います。(笑)
報道の仕方的に、やはり過労が原因で様々な症状を引き起こしたと考えるのがしっくりきます。そして約1カ月前に、わが子のように可愛がっていたという愛犬を亡くしたという経過も無視できません。
しかし、「これがあなたの病名です。」と小池氏に言ってあげられるだけのピッタリな疾患は見当たりませんでした。
一応いろいろな可能性について考えて、いろいろと調べたんだよという形跡を残しておきます。
可能性①:急性ストレス障害
心的外傷後ストレス障害(PTSD)という病名は皆様も聞いたことがあるのではないかと思いますが、どちらも「実際にまたは危うく死ぬまたは重傷を負うような出来事を、あるいは自分または他人の身体の保全に迫る危機を、その人が体験し、目撃し、または直面した。その人の反応は強い恐怖、無力感または戦慄に関するものである。」といった状況に暴露されていることが診断基準の要件となります。
急性ストレス障害では1カ月以内に症状が改善、PTSDは1カ月以上症状が持続するものと定義されます。
今回の場合、愛犬の死がそのような「体験」に該当する可能性がゼロではないですが、20歳程度と老犬であったようですし、日に日に衰えていく愛犬を見てそろそろ長くないなということはある程度予想されたものと思いますので、あまり可能性は高くなさそうです。
可能性②:慢性疲労症候群
他の方のサイトで、慢性疲労症候群を挙げられている方がいらっしゃいますが、あまりしっくりきません。
半年以上全身倦怠感に悩まされていたような根拠は、調べた限りでは出てきませんでしたし、別名「筋痛性脳脊髄炎」とも呼ばれるように、神経筋の症状が主体となる点が今回の場合とは異なっているためです。
可能性③:大うつ病
結果論で申し訳ないですが、うつ病を発症していた場合、1週間足らずの休養で退院は困難でしょうし、7/3には都議選候補者の応援に自ら出向いてますからね、まあないでしょう。
過労問題
とまあ身も蓋もないことを言ってしまいましたが、せっかくなので過労問題の核となる「過労死等」について、あまり長々と書いても誰も見てくれないのでポイントだけざっとまとめてみました。
ちなみに本項目は、厚生労働省が毎年11月に出すパンフレット「STOP!過労死」を参考にしております。
過労死等とは
「業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患や業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする死亡やこれらの疾患のこと」と説明されています。
ねこ
- 脳血管疾患…脳出血やくも膜下出血、脳梗塞など
- 心臓疾患…心筋梗塞や狭心症、急性大動脈解離など
- 精神障害を原因とする死亡…例えばうつ病を発症し自殺してしまうなどの状況が想定されます。
長時間労働と過労死等
長時間にわたる過重な労働は、脳・心臓疾患との関連性が強いという医学的知見が得られています。
時間外労働(週40時間を超える労働)が月45時間を超えたあたりから関連性が徐々に強まり、発症前1カ月間に月100時間または発症前2~6カ月平均で月80時間を超える場合は、関連性が強いと評価できるとされています。
また、業務における強い心理的負荷による精神障害で、自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害され、自殺に至る場合があるとされています。
ねこ
月45時間の時間外労働は月20日出勤した場合、1日2時間15分の残業、
月100時間、月80時間はそれぞれ1日5時間、4時間と計算できるね。
意外と当てはまる人多いんじゃないかな…?
36協定
使用者が法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて時間外労働させる場合、時間外労働の上限は月45時間・年360時間までにしてね、という決まりです。
ただし特例が認められていて、1年のうち6カ月までであれば、月平均80時間、1月100時間、年720時間未満を限度にすることができちゃうのです。
そしてそして、これは余談ですが、医師に限り月100時間という上限にも例外が設けられ、年960時間とか、1860時間までという、もはや上限とは…ってなるレベルの時間外労働が実質的に許される制度になってるみたいです。
ねこ
うまさんはもう病院勤務辞めちゃってるから関係ないけどね。
うま
まとめ
思ったよりもこの記事を書くのに時間がかかった割に、あまりまとまりも良くない出来となってしまいましたが、
入院病名が定まらないなんてことは、臨床現場では日常茶飯事、あるあるですし、今回の場合は過労が原因の体調不良説が濃厚なのですから、経過観察目的に入院させて十分な休息を取らせるという医師の判断は当然なのかなと思いました。
また、このような難しい状況の中で、公務から離れ、十分な休息を取ることを選択した小池氏の今回の判断に関しては、とても良かったなと思いました。
ほんとにつらい時は休んでいいんだということを、国民に示してくれたように感じます。
過労は、命にかかわる問題ですからね。
それにしてもこれだけ過労問題が叫ばれ、対策が進められている中で、日本を代表する知事さんが過労しているようじゃ、その末端にいる我々の労働環境はまだまだ改善されないでしょうし、国のトップたちがそれに対して「過労ごとき」とか「自分で蒔いた種」とか言ってしまうのはもうほんと論外中の論外、アウトオブ論外って感じですね。
国の制度とか法律って、労働者を守ることにフォーカスしがちですが、使用者はじめ、国のお偉いさんたちが自ら過労にならないように気を付けて、その姿勢を見せるべきなんじゃ?と思ってしまいました。
あれ、結局医学的なことだけじゃなくて批判みたいなこともしちゃってる?
この記事書くのに時間掛け過ぎて、ちょっと過労気味なので、この辺にしときます。
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