女性の1/3が〇〇〇!?フェリチン検査をすべきたった1つの理由

各論

皆さんは「フェリチン」という言葉を聞いたことがありますか?

実はこの「フェリチン」、多くの女性が抱える様々な症状を引き起こす「鉄不足」と関係しているんです。

2020年4月に、世界保健機構(World Health Organization:以下、WHO)が、このようなショッキングな報告をしました。

  • 若年女性の3人に一人が鉄欠乏
  • 妊娠女性の2.5人に一人が鉄欠乏
  • またその母親から産まれる子供のほとんどが鉄欠乏

参考:WHO guidance helps detect iron deficiency and protect brain development(2022/5/15参照)

一方で、「鉄不足」と似た言葉に ”貧血” という用語があります。

こちらは、聞いたことがある人が多いのではないでしょうか?

”貧血”は、一般的な医療機関でも治療対象として扱われることが多いのに対して、「鉄欠乏」は見逃されがちです。

しかし、心や体の不調が、実は「鉄不足」が原因だったということが非常に多いんです。

今回は、次の5つについて解説していきたいと思います。

  1. 鉄不足と多くの症状との関係
  2. 貧血と鉄欠乏の違い
  3. なぜフェリチンが重要?
  4. フェリチンの検査方法や、各種検査値の読み方

特に、次のような方、あるいは周りにいる人は要チェックです!

  • 若年女性(月経がある)
  • 妊婦
  • 2歳未満の乳幼児
  • 育ち盛りの(小)中高生
  • 競技レベルでスポーツをされている方
  • 食事に偏りがある方(ヴィーガン、玄米菜食等)

それでは解説していきます^ ^

鉄不足と多くの症状との関係

「鉄不足」は実に多くの症状と関係があります。

以下に、その一部を取り上げたいと思います。

”産後鉄欠乏に対する鉄の補充が、抑うつや疲労感の改善に有効であった”

E Moya, et al. Effect of postpartum anaemia on maternal health-related quality of life: a systematic review and meta-analysis. BMC Public Health . 2022 Feb 21;22(1):364

””妊娠中の鉄欠乏は産後のうつ・不安・認知機能・ストレスと深い関係にある”

E Moya, et al. Effect of postpartum anaemia on maternal health-related quality of life: a systematic review and meta-anJohn L Beard, et al. Maternal iron deficiency anemia affects postpartum emotions and cognition. J Nutr. 2005 Feb;135(2):267-72.

このように鉄欠乏は、妊娠中や産後女性の精神症状と深い関連性が報告されています。

また、このような女性から産まれた赤ちゃんには、

  • 知能発達の低下
  • 身体発育の遅れ

が多いことも知られています。*1

この他にも、一般に鉄不足と関係があると考えられているのは、以下のような症状です。

  • 動悸、めまい、肩こり、頭痛
  • 皮膚・粘膜・爪や髪の毛のトラブル
  • 注意力低下、イライラ、食欲がない、睡眠の問題、うつ
  • 疲れやすい
  • 風邪をひきやすい
  • 脚が浮腫む
  • 氷などを好んで食べる

ところがこれらの症状は、「貧血」でもみられます。

それでは、「貧血」と「鉄欠乏」との違いは一体何なのでしょうか?

貧血と鉄欠乏の違い

2つの違いを簡単に説明するなら、以下のようになります。

  • 貧血・・・ヘモグロビンが減少した状態
  • 鉄欠乏・・フェリチンが減少した状態

ヘモグロビン」や「フェリチン」という言葉が出てきましたね。

用語の説明の前に、補足しておきます。

貧血の原因
  • 鉄欠乏
  • ビタミンB群(葉酸やビタミンB12)の不足
  • 溶血 ※赤血球が壊れてしまう現象
  • がんなどの慢性炎症 等

上記のように、貧血の原因は様々です。
その一つに「鉄欠乏」がありますが、他の状態でも起こりうるのが「貧血」なのです。

ヘモグロビンとフェリチン

それでは、ヘモグロビンやフェリチンとは一体何なのか、以下の図を用いて説明していきましょう。

参考図:鉄の体内動態(引用:メディックメディア、一部改変)
鉄(図では「Fe」)
  • 私たちが摂取した食べ物の中に含まれる。
  • 胃や腸で消化・吸収されて、血液の中に取り込まれる。

血清鉄
  • 血液の中には、を運ぶトラックのようなものが存在する。
  • このトラックと鉄がくっついたものを「血清鉄」と呼ぶ。
  • トラックは体中の各組織にを運ぶ。

ヘモグロビン
  • 赤血球の中に含まれる、を含んだタンパク質のこと。
  • 最もを必要とする組織が、赤血球を造る「骨髄」という場所。
  • 赤血球は寿命が来ると破壊され、そこで再利用されるはトラックに運ばれて体の中を循環する。
フェリチン
  • 余ったは、私たちがお金を銀行に貯蓄するように、肝臓などの組織に貯蔵される。
  • この貯蔵鉄のことを「フェリチン」と呼ぶ。

ヘモグロビンは生活費、フェリチンは貯金

私たちの体では、以下のそれぞれの場合に、どのような優先順位で鉄が満たされるか(あるいは消費されるか)をみていきましょう。

鉄を十分に摂った時

血清鉄→ヘモグロビン→フェリチン

の順に満たされていく。

鉄が不足した時

フェリチン→血清鉄→ヘモグロビン

の順に消費される。

例えるならば、

  • 収入(鉄の供給)が十分ある時は、
  1. まず手持ちの現金(血清鉄)が増えて
  2. 最低限の生活費(ヘモグロビン)にそれを充て
  3. それでも余った分は貯蓄(フェリチン)にまわす
  • 逆に、家計が苦しくなる(鉄が不足する)と、
  1. 貯金(フェリチン)を切り崩して
  2. 手持ちの現金(血清鉄)が目減りしてきて
  3. 最低限の生活費(ヘモグロビン)すらも払えなくなる

ちょうど、これらの営みに似ていますよね。
(お金の話ばかりで申し訳ありません、、笑)

兎にも角にも、私たちの体は次のようにできています。

  • ヘモグロビン(最低限の生活費)を最優先に満たそうとする
  • フェリチン(貯蓄)は、いち早く使われる

この2点を押さえてくださればOKです^ ^

なぜフェリチンが重要か?

もう一度、貧血と鉄欠乏の違いをおさらいしておきましょう。

  • 貧血・・・ヘモグロビンが減少した状態
  • 鉄欠乏・・フェリチンが減少した状態

先に述べたように、鉄が不足している時、私たちの体はなんとしてでもヘモグロビンだけは確保するようにできています。

すなわち、ヘモグロビンが減少する前から、すでにフェリチンの低下が始まっている、ということです。

そして、フェリチンがある一定以上下がった時点で、様々な症状が現れ始めることがわかっているのです。*2

これが、鉄不足を評価する上で、フェリチンの低下を最重視して欲しい理由です。

フェリチンを測るには?

冒頭でもお伝えした通り、フェリチンは通常では測定されることが少ない検査項目です。

フェリチンを測るには、以下のような手段があります。

  1. 栄養療法専門クリニックを受診する
  2. 理解のあるかかりつけ医療機関にお願いする
  3. 簡易検査キットを利用する

それぞれのメリットとデメリットを表でまとめると、次のようになります。

手段メリットデメリット参考
栄養療法専門
クリニック
栄養医学的な評価&
治療が網羅的に行える
費用が高い
(検査&診察で約3万円
サプリメントで約3万円/月)
栄養療法導入
医療機関
かかりつけ
医療機関
医療保険で検査&治療できる
ため料金が抑えられる
理解が得られる確証がない「鉄欠乏性貧血疑い」
で保険算定可能
簡易検査キット自宅で簡単に検査できる
自身で健康管理ができる
面倒くさがりには向かないリ・スタート微量血液検査
マイクロセルフキット
会員価格約¥8000
フェリチンを測定する手段

この中で、私が最もおすすめする手段は、3番目の「簡易検査キットを利用する」ことです。

こちらの記事に、詳しい方法などを記載しているので参考にしてください。

各種検査値の読み方

フェリチンの読み方

最適な濃度:80〜125 ng/mL

  • 80 ng/mL未満で軽度の症状が出始める
  • 30 ng/mL未満は重度低値

一般的に低値とみなされるのは15 ng/mL未満であるため、鉄不足がいかに過小評価されているかがおわかりいただけると思います。

逆に、鉄過剰を疑う判断値は、

  • 女性:150 ng/mL以上
  • 男性:200 ng/mL以上

です。

ただし、フェリチンは溶血*や炎症でも上昇しますし、個人差も大きい値なので、単独の検査項目で評価したり、数字を絶対的に信頼したりすることはできません。
*溶血とは・・・赤血球が壊れて、中身が血液中に漏れ出した状態

あくまで症状と、その人の時間的な経過を追って、総合的に評価する必要があります。

血清鉄の読み方

最適な濃度:100 ng/mL

  • 80 μg/dL未満→鉄欠乏or慢性炎症を疑う
  • 120 μg/dL以上→溶血or鉄過剰を疑う

上記に大体の目安をお示ししましたが、血清鉄は単独で評価するのではなく、不飽和鉄結合能(UIBC)と一緒に評価することが一般的です。

また新しい用語が出てきましたね。しかも難しそうな響き、、、

ここは発展的な内容なので、読み飛ばしていただいても結構です!

ですがこのUIBC、実はすでに登場しています。

引用:病気がみえるvol.5

先ほど、ヘモグロビンとフェリチンについて説明した際に、血液では鉄を運ぶ「トラック」みたいなものが存在するということを言いました。

鉄を運ぶトラックを血清鉄と言いますが、鉄を運んでいないトラックのことを”UIBC”と呼びます。

血清鉄とUIBCを合わせて、総鉄結合能(TIBC)と言います。

画像の通り、式で表すと以下のようになります。

TIBC=血清鉄+UIBC

血清鉄とUIBC、TIBCは、正常ではそれぞれ100 ng/mL200 ng/mL、足して300 ng/mLとなるのが、最も理想的な値と言われています。

図:血清鉄とUIBCの関係

鉄欠乏では、貯金(フェリチン)とともに、手持ちの現金(血清鉄)も少なくなっている状態ですから、血清鉄は100 ng/mL未満となります。

また、鉄不足を補おうと、体はトラックの数を増やすので、UIBCは200 ng/mLを大きく超える値となります。

結果として、TIBCは300 ng/mLを超える値となります。

同じような理屈で、炎症、溶血、鉄過剰の各場合においても、それぞれ上図のように値が動きます。

ヘモグロビンの読み方

最後にヘモグロビン(Hb)の値について見ていきましょう。

一般的な貧血のめやすは、以下の臨床判断値*を用います。
*「臨床判断値」という用語がわからない方はこちらを参考にしてください!

  • 女性:12 g/dL未満
  • 男性:13 g/dL未満

一方、栄養医学で用いる臨床判断値は次の通りです。

栄養医学的な貧血の指標(臨床判断値)

  • 女性:14 g/dL未満
  • 男性:15 g/dL未満

一般的な貧血の指標と、栄養医学的な理想的な値とはだいぶ開きがあることがわかるかと思います。

⚠️一般的な指標で貧血と判断される場合は、すでにかなり深刻な鉄欠乏がある可能性が高いので、速やかに医療保険で治療しましょう!

まとめ

今回は、次の5点について解説してきました。

  1. 鉄不足と多くの症状との関係
  2. 貧血と鉄欠乏の違い
  3. なぜフェリチンが重要?
  4. フェリチンの検査方法や、各種検査値の読み方

それぞれの項目で解説したことのポイントをまとめると、次のようになります。

  • 全世界で、女性の3人に一人以上、子供の2.5人に一人が鉄欠乏である。
  • 貧血と診断される前から、鉄欠乏による症状は起こりうる。
  • Hbだけではなく、フェリチンをチェックすることが重要!
  • 各検査項目の最適な濃度は、以下の通り。
各種検査値のまとめ

今回は、鉄不足の評価方法までにとどめて、解説をしました。

今後、鉄不足の解消方法についても詳しく解説していこうと思いますので、今後の記事を参考にしてください^ ^

最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございました。

参考文献

*1 WHO guideline on use of ferritin concentrations to assess iron status in individuals and populations

*2 ”原因不明の疲労感を訴える貧血のない女性に、鉄補充が有効であった”
F Verdon, et al. Iron supplementation for unexplained fatigue in non-anaemic women: double blind randomised placebo controlled trial. BMJ 2003; 326

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