深部静脈血栓症(DVT)の離床判断基準

雑記

本日のPOINT禁忌を押さえて、なるべく早期に離床

入院中の患者さんにDVTが見つかり入院期間が延びてしまった。いつ頃から、何を基準に歩かせても良いのだろう?

このような疑問に直面したことのある臨床医は多いことでしょう。

「93歳女性、元々のADLはトイレ歩行程度。偽膜性腸炎で5日前まで入院加療、退院後に下痢が再燃し再入院。入院時、右下肢の著明な浮腫あり、下肢エコー検査で、浮遊血栓を伴わない右大腿静脈以遠の深部静脈血栓症と診断。疼痛は軽度。速やかにヘパリン投与が開始され、治療域に達している。肺塞栓症は併発しておらず、バイタルサインは安定している。」。この方の安静度、皆さんであればどのように考えて決定しますか?

「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断, 治療, 予防に関するガイドライン(2017)」にはこのように書かれています。以下引用。

DVTの急性期には,~(中略)~ 抗凝固療法を施行していれば,ベッド上安静でなく早期に歩行を行ってもあらたなPTE(肺血栓塞栓症)発症は増加せずDVTの血栓伸展は減少し疼痛も改善した

下肢疼痛が強くない巨大な浮遊血栓を伴わない一般状態が良好などの条件がそろえば,患者をベッド上安静にせず早期歩行させることにより,DVTの悪化防止と患者のQOLの向上が期待できる.巨大な浮遊血栓症例では症例ごとの判断を要する.

肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断, 治療, 予防に関するガイドライン(2017年改訂版)

すなわち、このガイドラインに則れば、本症例で安静臥床を取らせる理由はなく、ADL維持の観点からも、むしろ早期離床させた方が良いという結論になります。

ただガイドラインでも触れられている通り、下肢疼痛が強い場合や、いかにも遊離してしまいそうなエコー上輝度の低い血栓を認める場合は、慎重になる必要があります。

そのような場合には、1~2週間程度の安静が必要であるとする意見も多いようです。

最終的には個々の症例に応じてその都度判断するしかないということにはなってしまいますが、動かしてはいけない基準があるということと、動かした方がいい場合(高齢で廃用が急速に進みそうな場合等)があるということを押さえ、リスクとベネフィットを考慮しながら安静度を検討していく上で、この記事がその一助になれば幸いです。

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