突然ですが、皆さんはこのグラフに見覚えがありますでしょうか。
汚い図で申し訳ございません。
もう少し要素を追加していきましょう。
答えは、骨密度のグラフでした。
本日は、
- 骨密度のグラフが読めるようになること
- 骨粗鬆症の治療がどんなものであるか、最低限の知識を身に付けること
の2点を目標に解説していきたいと思います。
骨密度のグラフ
縦軸と横軸
まずは基本的なところですが、図1にお示しする通り、縦軸が骨密度(g/cm2)、横軸が年齢を表します。
同年齢平均値
図2をご覧ください。
左上から右下に斜めに横断する3本の線ですが、これは中央が年齢毎の骨密度平均値を結んだ線、そしてその上下に走るのが、±2SDを結んだ線です。
*SD=標準偏差
対象の患者さんの骨密度を、同年齢の平均値と比較することができます。
YAM
YAMは、骨粗鬆症を診断、治療する上で必ず知っておかなければならない用語です。
図3をご覧ください。
真ん中に平行に走った2本の線はそれぞれYAMの70%、80%となるラインを表します。
「%YAM」は便宜的に用いているだけなので用語として覚える必要はありませんが、YAMを100%とした時の、対象の患者さんの骨密度(%)を表しています。
これらの線によって区切られた領域の色分けは何を表しているのでしょうか?
それを理解するためには、骨粗鬆症の診断基準について触れておく必要があります。
骨粗鬆症の診断基準
軽微な外力とは、立った姿勢からの転倒か、それ以下の外力をさす。
すなわち、グラフの色分けには、以下のような意味合いがあります。
正常ゾーン(%YAM≧80%)
椎体または大腿骨近位部に脆弱性骨折がある場合のみ、骨粗鬆症と診断される。
骨量減少ゾーン(70%<%YAM≦80%)
その他の脆弱性骨折があれば、骨粗鬆症と診断される。
骨粗鬆症ゾーン(%YAM<70%)
骨折の有無によらず、骨粗鬆症と診断される。
グラフのまとめ
- 縦軸は骨密度(g/cm2)、横軸は年齢を表す。
- 斜めに走る3本の線は、骨密度の同年齢平均値とその分布範囲を表す。
- YAM=若年成人平均値
- YAMの70%および80%を示す2本の直線により、正常・骨量減少・骨粗鬆症の3領域に区分されている。
このようなグラフに各個人の骨密度の値をプロットすることで、同年齢と比較してどうか、骨粗鬆症かどうかが一目瞭然というわけです。
骨粗鬆症の治療
以下に示すのが、骨粗鬆症に用いられる薬剤たちです。
- カルシウム薬
- 活性型ビタミンD3製剤
- ビスフォスフォネート製剤
- デノスマブ製剤
- 選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM)
- 副甲状腺ホルモン製剤
- モノクローナル抗体製剤
- その他…
ご覧のように非常に種類が多く、いったい何をどう使えばいいのかわかりませんよね。
しかし、ご安心ください。
骨粗鬆症の成因を理解すれば、治療方針も選択できるようになります。
骨粗鬆症の成因
骨粗鬆症は骨強度低下に基づいて脆弱性骨折が惹起される危険性が高い病態として定義されます。
骨強度は骨密度と骨質により規定され、それぞれの与える影響の比率は7:3とも言われています。
骨密度、骨質を低下させる要因は、そもそも骨の材料となる成分が足りないか、骨吸収が亢進しているか、骨形成が低下しているかです。
すなわち、治療の大筋は、①骨の材料を増やす、②骨吸収を抑える、③骨形成を促すの3種類のいずれかしかありません。
薬剤選択の実際
骨粗鬆症と診断されたら、全例が薬物治療の対象となります。
まずは、活性化ビタミンD3製剤の投与開始を検討しましょう。
小腸からのカルシウム吸収を促すことで、骨の材料を増やします。
良く用いられる処方例を以下にお示しします。
例)エルデカルシトール(エディロール)0.75μg、1日1回内服
続いて、症状の重症度やタイプに応じて以下の薬剤を検討します。
骨吸収 | 骨形成 | 代表的な薬剤 |
---|---|---|
抑制作用 | – | ビスフォスフォネート製剤 デノスマブ製剤 SERM |
– | 促進作用 | 副甲状腺ホルモン製剤 |
抑制作用 | 促進作用 | モノクローナル抗体製剤 |
剤形や投与方法も様々あるので、患者さんに応じて最適なものを選択しましょう。
ビスフォスフォネート製剤
破骨細胞による骨吸収を抑制する。
非常に稀なので、本副作用を恐れて治療しないというのは本末転倒。
朝起きた時に、コップ一杯(約180cc)の水でかまずに飲む。
服用後30分は横にならず、飲食並びに他の薬剤の経口摂取も避ける。
デノスマブ製剤
破骨細胞による骨吸収を抑制する。
選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM)
閉経でエストロゲン分泌の低下によって過剰となった骨吸収を調整する。
副甲状腺ホルモン製剤
骨芽細胞による骨形成を促進する。
椎体骨折既往者が良い適応
モノクローナル抗体製剤
骨芽細胞による骨形成を促進するとともに、骨吸収抑制作用も有する。
骨折の既往等、重症の骨粗鬆症に用いる。
治療効果判定
参考文献
- 原発性骨粗鬆症の診断基準(2012 年度改訂版), 日本骨代謝学会,日本骨粗鬆症学会合同原発性骨粗鬆症診断基準改訂検討委員会
- 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版, 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会(日本骨粗鬆症学会, 日本骨代謝学会, 骨粗鬆症財団)
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