「腸閉塞」は救急外来で最もよく遭遇する急性腹症の一つですね。
本日はその腸閉塞、単純性?複雑性?をテーマに話を進めていきます。
単純性か複雑性か
なぜ単純性、複雑性に分類する必要があるのでしょうか?
理由は、緊急性が高いか、様子を見てよいかが分かれるからですね。
単純性であれば、翌朝に外科診察を依頼すればいいかもしれませんが、複雑性であれば、外科当直やon callを起こしてでも早急に対応する必要があります。
緊急手術となることも稀ではありません。
症例
それでは症例ベースで今回のテーマを深堀していきましょう。
とある日の当直、時刻は23時です。
皆さんどうですか?
診断は「腸閉塞」で良さそうですが、単純性か複雑性か判断に迷うのではないでしょうか。
これは実際にうまとねこが当直で引いた症例ですが、この時点では、
「余裕やん!closed loopこそあるけど、バイタルもデータも悪くないし、今んとこ血流障害もなさそうやから朝まで様子見て外科コンサルトでおっけ。」
と単純性の判断を下してしまいました。
結果はお察しの通り、複雑性でした。
バックアップの上級医がCT画像を見るや否や、
「うまとねこ先生、これ複雑性だからすぐ外科on call呼んで、緊急opeの準備しよう!」
と冷静に、しかし緊迫感のある物言いで教えてくれました。
というわけで、緊急性の高い病態をあわや放置してしまう所でした。
バックアップがいてくれて助かった、、、
closed loopを見逃すな
今回のポイントはclosed loopです。
CTでは腸管が鳥のくちばしのように先細りになって、双方向に追うことができないといった所見が見られます。
本症例では、
- バイタルサインの異常
- 腹膜刺激徴候
- 炎症反応やCK, Lacの上昇
- 造影効果の減弱や腹水
といった、典型的な複雑性を疑う所見を認めませんでした。
唯一、この「closed loop」に足元をすくわれる結果となりました。
いつ血流障害が起きてもおかしくない状態であった、というわけですね。
そういえば研修医時代、外科の先生が、CTの画面に張り付いて必死で腸管を端から端まで追っていたのを思い出しました。
そういうことだったのかと、今ようやく理解しました、、、
皆さんは「うま」さんみたいなダメレジにならないよう、しっかり勉強しましょうね。
※ちなみに、
- 本文中に出てくる「データ」ってなんぞや?
- 「walk in」「on call」とか英語わからん!!
という人のために、学生時代自分もよくわからなかった単語とか略語を[医学生向け]で紹介していきたいと思うので参照してくれたら嬉しいです。
※緊急手術の適応などは、施設によって若干の違いがあるようなので、この記事を鵜吞みにせず参考程度にしていただければと思います。
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